『いちえふー福島第一原子力発電所労働記ー』を読んで
いちえふ 福島第一原子力発電所労働記(1) (モーニングKC) | ||||
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『いちえふー福島第一原子力発電所労働記ー』竜田 一人 講談社
「いちえふ」とは福島第一原子力発電所のこと。漫画の作者が実際に原発の現場で働いてきた様子を淡々と描いている。一次情報から制作されたルポである。
作者が現場からのミクロの視点で感じた、労働環境、賃金、作業の進捗など様々なメディアで報道されていることとのギャップ。何よりも、現場で働く人同士(多くは被災者の地元住民の方)のやり取りは、外部からの取材では明らかにすることは難しい貴重な情報。様々な得体のしれない恐怖から発生する憶測、煽りなどをに対して現場で原発と日々向き合う人々はどう感じているのか。
震災から時間が経ち、いつの間にか過去の問題として頭の片隅に追いやりがちな「厄介な」問題、原発。東電の経営陣、裁判、政治などの動きをメディアから発信されている情報も聞き流してしまっていないだろうか。自分は原発問題の解決に向けて何一つ動くことはできていないのではないか。少しずつ値上がりをする電気料金に不満さえ抱いているような有り様だ。作者をはじめ、現場で働く人は少しずつであろうと事態を打開するために働いていることは間違いない。
正直、自分は同じことはできない。しかし、何かすることはあるのではないか。少なくても、外野からあれこれと無責任な言葉を垂れ流さないこと。原発問題を過去のものとして忘れようとするのではなく、考え続けよう。
※2014年1月 南相馬にて