あああ読書記録

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『若者と貧困 いま、ここからの希望』を読んで

若者と貧困(若者の希望と社会3)

湯浅 誠,冨樫 匡孝,上間 陽子,仁平 典宏 明石書店 2009-07-28
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by ヨメレバ

 

この本では、まずミクロの視点、貧困の当事者の若者の事例を紹介している。子供時代から現在までの事例を追っていくことで、貧困に陥る背景、要因は人生の様々なステージに存在し、様々な要素が絡み合い、負のスパイラルを形成し、貧困に陥る様子が報告されている。

貧困に陥る要因はとても身近で、自分にも当てはまっていたケースが多く存在していたことに気付かされる。なんとか不自由なく生活できていることは細かな”幸運”が重なっているからにすぎない。残念ながら貧困とは隣り合わせの社会で自分は生きている現実を思い知らされる。

細かな”幸運”とは、様々な資産(主に家族がもたらしてくれる生活する力)を身に付ける環境があり、救ってくれたセーフティーネットにたどり着くことができることだ。

 

次にマクロの視点。「世代間の対立」をそれぞれの立場から検討することで、見えてくる問題点と、対立していることによって生じてくる問題点を浮き上がらせている。

グループ(本書では世代)で分かれると、それぞれの立場のからお互いの問題点を指摘する行動が目立ってしまい、現在進行形の問題の解決に向けての議論が進まない。また、他者に責任を取らせようとし、自らは問題から逃れようとしてしまうという大きなデメリットが生じる。

このデメリットを克服して、問題解決に向かうには、断裂しているグループの枠組みを越えて人々が繋がり、問題を共有し、解決に向けて建設的な議論をし、協同して動くことが求められる。

 

この本を読んで私がキーワードと感じたのは「情報」だ。

ミクロの情報。それは、極端な事例だとしても同じ社会の中で起こっていることが自分達に関係ないということはない。問題提起として共有されなければならないと思う。

マクロの情報。これは長い歴史の流れ、大きな単位の統計などマクロ的に分析しなければ、問題の本質を見抜き、解決・改善へと効果的な策をとることはできないだろうと感じる。

両方向からの情報をなるべく多くの人で共有していかなければ問題に気付き、解決には向かえないのだろうと思う。

  

若者と貧困(若者の希望と社会3)