あああ読書記録

読書、映画鑑賞のログ。個人的な感想を書いてます。

『生活保障の戦略―教育・雇用・社会保障をつなぐ』を読んで

  ここでは生活保障とは雇用と社会保障、そして教育の3つのサブシステムの連携によって構成されていると考えている。今日、若者を中心に、親の世代が歩んできたライフサイクルに倣おうとしても様々な壁につきあたり、根本的なところで成り立たなくなっている。教育、雇用、社会保障の連携としての生活保障について、その従来のかたちが機能不全に陥っている経緯を辿り、その新しいあり方を7人がそれぞれの視点から展望している。

現在、グローバル市場の下で競争力を付けるために、より自由化へと変化してきた日本社会において、従来の雇用を中核とした生活保障のかたちでは対応できない状況に陥っていとし、現状をふまえ、教育と社会保障の相互乗り入れを図りながら、そのユニットで社会参加と雇用を支え、雇用と人々の生活の安定を両立させ、併せて性や年齢でライフサイクルが拘束されない社会をつくりだすことのできる生活保障の戦略を提起している。

 

第1章 教育と仕事の関係の再編成に向けて―現状の課題・変革の進展・残された課題―

本田 由紀

 

この章では、「日本の教育と仕事の関係の再編成について議論」している。そして、「仕事のあり方」、「教育と仕事の接合のあり方」それから「教育のあり方」から、現状とその問題を提起し、対する政策とその問題点を検討している。

私は、義務教育をから始まる、一般の教育に関しては「教育と仕事の接合」に対して特別な取り組みは必要ではないと考える。現在、多くの一般の大学では学生の就職活動支援に力を入れており、大学のセールスポイントとしても就職率や、就職活動支援体制の充実を挙げている。これは、大学(学校)の目的は何かということから目をそらしてしまっているのではないかと感じる。時代とともに組織の役割は変化もすることもあり、学校もまた変化せざるをえない状況(保護者の意向、少子化に伴い学生が集め難くなっているなど)になっていると考えることもできるが、私はそれは違うのではないかと考える。

社会的自立を促す教育とは、中高生でいえば、社会科(特に労働に関する法律をはじめとした学習)をはじめとした一般的な教科学習を充実させることにより達成できると考える。大学では教養科目がその役割を負っていると考えられる。

一般の教育で「教育と仕事の接合」をせずに、教育から仕事への移行を安定させるのかという問題には、筆者も主張している「『無条件の生の保障』の整備」が必要不可欠となる。新卒一括採用から脱落してしまったらおしまい。ではなく、しっかりと生活することができる保障、保障を受けることでスティグマを受けることのない社会の整備をすること目指したい。

 

さらに、会社内で訓練を受け、定年まで働き続けることができなくなった現代の日本社会では、年齢などに関係なく「仕事に接合する教育」すなわち職業教育を受けることのできる環境を整備することによって、新卒、転職を問わず仕事へ繋がることができるのではないかと考える。その職業教育の結果として雇用する側と求職者とのギャップを埋めることが可能となり、誰でも働くことのできる社会となるのではないかと考える。

 

生活保障の戦略――教育・雇用・社会保障をつなぐ

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