あああ読書記録

読書、映画鑑賞のログ。個人的な感想を書いてます。

見えない相手って怖い!わからないことは恐怖だと思う。――スティーブン・スピルバーグ監督『激突!』原題『Duel』

by カエレバ

スピルバーグ監督の初期作品。

 

恐怖の原因は「わからない」ということだ。わからないもの、人とは必要に迫られなければ関わろうとしないだろう。しかし、そんな「わからない」相手が突然、自分に対して攻撃的に迫ってきたらどうだろう。恐怖でしかない。そんな恐怖を描いたのが『激突!』だ。

何気なく主人公は、排気ガスをまき散らしながらノロノロと走るオンボロの大型トラックを追い越す。恐怖はその後、延々と続くことになる。トラックは強烈な悪意を持って、主人公の乗用車を攻撃してくる。行く手を阻む、追い立てる、追突する、踏切で走行中の貨物車へと巻き込ませようとする。「追い抜かされたことが癪に障ったのか?」考えるが、その程度でここまでの攻撃をされるものなのか?運転手の顔は見えない、もちろん表情も読めない、声も聞けない。何故ここまで執拗に???主人公は、「わからない」相手にとことん追い詰められていく。

もちろん映像も迫力があって恐ろしい。しかし、それ以上に謎だらけのトラックの狂気に底知れない恐怖を鑑賞後も味わうことになる。

普段の生活でも、似た恐怖に出くわす機会は多い。酔っ払った人、混雑している駅で肩をいからせて歩く人、突然怒鳴りだすクレーマーなど。まだ姿が見えている人物ならばマシだ。

僕にとってもっと恐怖を感じるのは政治だ。何処に目的があって進められているのかわからない政策。どこの誰の意向が働いて、誰に影響するのかどこにもとっかかりのないようなこともよくある。しかし、実は、日本に住む自分は関係する、影響を受けることは少なくないのだ。怖いね。

恐怖を振り払うため、せめて緩和するためには「わからない」ことを「知って」いくしかない。情報を集める、自分で分析してみる、詳しい人に質問をする。学ぶということが自分を恐怖から救うてだてだ。

逆に知ろうとすることを諦めてすべてを受け入れる境地に至っている人は恐怖を感じないのかもしれない。仏教的な悟りというか。

 

知ることできないのならば、もう死に物狂いに逃げるしかない。『激突!』の主人公のように。

 

理由もわからず攻撃される恐怖を描いた映画としては、アルフレッド・ヒッチコック監督の『鳥」原題『The Birds』もオススメ。しばらくカモメが怖くて思えてしょうがなかった。

 

 

by カエレバ